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スペシャルティコーヒーの原価計算と利益率アップ術


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スペシャルティコーヒーの原価計算と利益率アップ術

 レストランでスペシャルティコーヒーを提供する際には、1杯あたりの正確な原価を把握し、適切な価格設定と販売戦略を練ることが重要です。高品質なコーヒーはお客様満足度を高めるだけでなく、高い粗利(利益率)を確保しやすい商品でもあります。以下では、スペシャルティコーヒー豆の価格と使用量、抽出時の付随コスト、理想的な原価率と価格設定、レストランにおけるコーヒー販売の位置づけ、高単価を実現するポイント、そして売上アップの工夫について具体的なデータとともに解説します。


スペシャルティコーヒー豆の価格と1杯あたりの使用量

スペシャルティコーヒー豆の業務用価格は、一般的に1kgあたり約4,000円前後が目安と言われていますlightupcoffee.com

小売店頭では100gあたり600~800円(つまり1kgあたり約6,000~8,000円)といった価格帯の商品も多いですが、業務用に1kg単位でまとめて仕入れる場合は約3,500~6,000円/kg程度に抑えられることが一般的ですlightupcoffee.comubiregi.jp

例えば有名ロースターでは、250gで1,296円の豆を1kgまとめ買いすると3,780円(100g換算378円)というケースもありhoop.coffee、量による割引でコストダウンが可能です。一方で、通常のコモディティコーヒー豆(一般的なブレンド豆など)は1kgあたり2,800~3,000円程度が相場となっていますubiregi.jp。つまりスペシャルティ豆は一般豆の約1.5~2倍程度の単価と考えておくとよいでしょう。


1杯のコーヒーに使用する豆の量は、抽出方法や提供するカップのサイズによって異なりますが、およそ10~15g程度が平均的です。一般的なカフェサイズの杯数では15g前後使われることが多く、焙煎済みのコーヒー豆1kgあたり約60杯分がとれる計算ですlightupcoffee.com(反対に100gで8~10杯分とも言われ、これも1杯あたり10~12.5g程度を示しますproduce.imom.co.jp)。

例えば、15gの豆を使用する場合、1kgの豆で約66杯淹れられます。このとき1杯あたりの豆原価は、仕入れ値4,000円/kgの豆なら約60円、6,000円/kgの豆でも約90円となります。豆の種類によりますが、スペシャルティコーヒーでも1杯あたりの豆コストは数十円程度に収まることがわかりますnote.com


抽出にかかる水道光熱費・人件費などの付随コスト

コーヒー1杯を抽出・提供する際には、豆代以外にも様々な付随コストが発生します。

主なものとしては、水道代や電気・ガス代といった水道光熱費、紙コップや砂糖・ミルク・おしぼりなどの消耗品(店内提供なら陶器のカップ洗浄費用など)、そして抽出や提供にかかる人件費が挙げられます。水やフィルター代、電気代などは1杯あたり数円~十数円と微々たるものですが、人件費は無視できません。

スタッフがハンドドリップで丁寧に淹れる場合は1杯に数分を要するため、その時間あたりの人件費を考慮すると1杯あたり数十円程度の人件費コストがかかっている計算になります。

具体的には、豆代が35円程度のコーヒーでも、こうした付随経費を加味すると1杯あたり約100円のコストになるとの試算がありますubiregi.jp

この試算ではコーヒーマシンの減価償却費や人件費、店舗家賃等まで含めた広義のコストを単純按分していますが、実際にも豆原価の2~3倍程度のコストがかかるケースは珍しくありません。

たとえば豆代60円のスペシャルティコーヒーであれば、水道光熱費・カップ等で+5円、人件費で+30円と見積もって合計約95円、ほぼ100円前後が1杯あたりの総原価となるイメージです。もちろん実際の人件費配分や提供スタイルによって変動しますが、豆以外のコストも考慮して原価計算しておくことが大切です。


販売価格設定と理想的な原価率(利益率)

メニューの原価率(コスト率)とは、販売価格に対する原価(材料費)の割合のことです。一般に飲食店全体では原価率30%前後(売価に対して原価が3割程度)が収益性の目安とされていますubiregi.jp。これは料理メニューなども含めたトータルでの目標値ですが、ドリンク類についてもこの基準に沿って価格設定すると健全な利益を確保しやすくなります。

実際、原価率が低いほど利益率(粗利率)は高くなり、売上に対する利益貢献度が大きくなりますubiregi.jp


コーヒーは他の飲食メニューと比べても原価率が低めの商材です。

豆代だけで見れば原価率10%程度(例:豆原価40円で販売価格400円の場合)に抑えられることも多くcoffee-labo.co.jp、それだけ高い利益率を生みます。ただし前述のように、人件費等も含めたトータル原価ではもう少し割合が上がります。スペシャルティコーヒーの場合、豆原価がやや高くなる分、適正な原価率に収めるには販売価格も通常のコーヒーより高めに設定する必要があります。


理想的には原価率25~30%程度に収まる価格設定が望ましいでしょう。例えば1杯あたり総原価100円のコーヒーなら400円前後の価格設定で原価率25%となり、十分な利益が確保できます。総原価150円なら500~600円で25~30%、総原価200円なら670~800円で25~30%という具合です。高品質な豆を使う分価格は上がりますが、その分付加価値も高いため、お客様に納得いただける範囲で適正利益が出る価格を設定しましょう。

なお、コンビニコーヒーやファストフードでは戦略的に原価率が高めの商品もあります。例えばセブンイレブンの100円コーヒーは豆原価約40円にカップ代約10円で原価率50%近くと言われますcoffee-labo.co.jp。これは客寄せも兼ねた特別な例ですが、通常のカフェやレストランで提供する場合は原価率30%以下に抑えるほうが経営的には望ましいですubiregi.jp


 価格設定のポイントとして、まず提供するコーヒー1杯あたりの総原価を正確に算出し、それを25~30%で割り戻した価格をひとつの目安にします。例えば総原価が120円なら÷0.25で480円(原価率25%)、÷0.3でも400円(原価率30%)となるため、その間の400~480円程度が目安価格となります。あとは自店の客層や提供方法、他メニューとのバランスを考慮し、価値に見合った価格を設定してください。スペシャルティコーヒーは高品質ゆえに単価も高めになりますが、後述するような付加価値を伝えることで十分にお客様の納得感を得られる価格にできます。


レストランにおけるコーヒー販売の位置づけ(高粗利商品)

コーヒーはレストランやカフェにおいて単価は低めでも粗利の高い商品として位置づけられます。料理メニューの原価率が30~40%になることも珍しくない中で、コーヒーの原価率は先述のように20%前後、場合によっては10%台に収まりますubiregi.jp

原価率が低い=利益率が高いため、コーヒー1杯あたりの利益額(粗利額)は非常に大きく、フードメニューよりも利益貢献度が高い商品と言えますubiregi.jp。実際、喫茶業態ではドリップコーヒーがメニュー中最も原価率が低い部類にあり、ドリンク類で高い利益率を確保するビジネスモデルが一般的ですchefdou.com


例えば、1杯500円で提供するコーヒーの材料費(総原価)が100円であれば、1杯あたり400円の粗利を生みます。10杯売れば4,000円、食後に20名のお客様が注文すればそれだけで8,000円の粗利となり、売上総利益率の向上に大きく寄与します。客単価アップや利益率改善のために、食後のコーヒー提供は非常に有効な施策なのです。レストランではコーヒーや紅茶といったドリンクは食後の定番ですが、提供しないままお客様が帰ってしまうとその分の潜在売上・利益を取りこぼすことになります。逆に言えば、デザートやコーヒーをセットで注文してもらうことでテーブルあたりの利益を伸ばすチャンスになるわけです。


もっとも、コーヒーの利益率が高いからといってコーヒーだけで店の利益を稼ごうとするのは現実的ではありません。コーヒーはあくまで客単価を底上げし満足度を高めるための一品であり、それ単体で大きな売上を占めるものではないからです。実際に「コーヒーだけで収益を上げるのは困難」であり、多くの場合はスイーツや軽食と組み合わせてドリンクとフードの両方で利益を確保するのが定石ですubiregi.jp。したがって、レストラン経営者としてはコーヒーを高粗利のプラスアルファ商品と位置づけ、他メニューとのバランスで売上・利益を最大化する視点が重要になります。


スペシャルティコーヒーで実現できる高単価設定とその理由

スペシャルティコーヒーを採用することで、通常より高い単価設定が可能になります。その理由は、スペシャルティコーヒーが持つ付加価値にあります。まず第一に、豆そのものの品質や風味が卓越しており「違いのわかる」味を提供できることです。さらに、生産地・農園のストーリーや栽培方法、精製プロセスへのこだわりといった背景情報も明らかになっているため、お客様に一杯のコーヒーが持つ物語を伝えることができますubiregi.jp。例えば「○○農園で手摘みされたシングルオリジンの豆を使用」や「バリスタ世界チャンピオン焙煎士が焙煎した豆を採用」などと説明すれば、それ自体が他にはないブランド価値となり、お店の魅力を高めてくれますproduce.imom.co.jp。大手メーカーのありふれた豆では難しい差別化ですが、こだわりのロースターや有名生産地の豆を使うことで特別感を打ち出せるのです。


また、スペシャルティコーヒーは味わいの面でも体験価値を提供できます。単にカフェイン摂取のための飲み物ではなく、「香りや余韻まで楽しめる贅沢な一杯」「食後にゆったりくつろぐための嗜好品」として演出することで、お客様はその時間に付加価値を感じます。たとえば、心地よい音楽が流れる店内で丁寧にドリップされた一杯のコーヒーを、ふかふかのソファに座って楽しむとしましょうnote.com。窓から見える景色や店内の雰囲気、立ちのぼる香りまで含めて、お客様は自宅では得られない特別な体験を味わえますnote.com。このようにコーヒーを飲む体験そのものに価値があると感じてもらえれば、たとえ価格が500~600円と高めでも「それだけの価値があった」と納得していただけるのです。


高単価を設定する際には、その理由を明確に伝えることが大切です。「なぜこのコーヒーは他より高いのか?」という点に、お客様が納得できる説明があれば価格に見合った満足度を提供できます。産地の希少性や豆の品種、焙煎度合いへのこだわり、抽出の丁寧さや提供スタイル(フレンチプレスでテーブルサービスをする等)など、考えられる魅力をしっかりとアピールしましょう。例えば「当店のコーヒーはスペシャルティグレードのみを使用し、豆の個性に合わせてハンドドリップで抽出しています。○○産の豆はフルーティーな酸味が特徴で、食後のデザートとも相性抜群です。」といった説明を添えるだけでも、お客様の受ける印象は大きく変わります。「ストーリー」「体験」「品質」という付加価値によって、高単価でも選ばれるコーヒーを提供できるのがスペシャルティコーヒーの強みなのです。


売上アップに貢献する工夫あれこれ

スペシャルティコーヒーを扱うことで、単に高単価な商品を提供できるだけでなく、売上アップにつなげる様々な工夫が可能です。以下に、レストランでコーヒー販売を強化し利益率向上に貢献させるポイントをいくつか紹介します。


  • セット販売の活用:コーヒーをデザートや食事メニューとセットにして提案することで、注文率を高める方法です。例えば「ランチに+200円でコーヒー付き」「ケーキとコーヒーのセット割引」などのメニューを用意すると、お得感から注文が増えやすくなりますpro.gnavi.co.jp。実際、食事を提供する店では食後のスイーツとドリンクをセット提案することで売上アップにつながるケースが多く報告されていますpro.gnavi.co.jp。お客様にとっても一緒に注文する手間が省け、統一されたサービスを受けられるため満足度が上がります。

  • ペアリングの提案:料理やデザートに対して相性の良いコーヒーをペアリング提案するのも効果的です。ソムリエがワインを提案するように、「酸味のあるエチオピア産コーヒーはチーズケーキと好相性です」などプロならではの組み合わせを案内すれば、お客様の興味を引き追加注文を促せます。特にスペシャルティコーヒーは豆ごとに風味特性がはっきりしていますので、デザートとのマリアージュ(相性)を打ち出すことで付加価値の高いセットとして提供できます。こうした提案型の販売はお客様との会話も生まれやすく、リピーター獲得にもつながるでしょう。

  • SNS映えする演出:若い世代を中心に、思わず写真に撮りたくなるようなSNS映えは集客効果抜群です。コーヒーについても、美しいラテアートを施したカプチーノや、クリアガラスのサーバーで提供するハンドドリップなど、ビジュアルにこだわってみましょう。実際にあるレストランでは、話題のスイーツとカフェメニューを投入したところ来店客がSNSに投稿してくれる例が増え、認知度アップに繋がったケースがありますpro.gnavi.co.jp。スペシャルティコーヒーの持つ鮮やかな酸味や個性的なフレーバーを強調した季節限定メニューを作り、「ここでしか飲めない一杯」としてSNSで発信してもらうのも良いでしょう。映える見た目と話題性によって新規集客や来店動機の喚起が期待できます。

  • コーヒー豆の店頭販売:提供しているスペシャルティコーヒー豆を**物販(テイクアウト用の豆販売)**するのも有効な戦略です。気に入ったお客様が自宅用に購入してくだされば追加売上になりますし、「お店と同じ味を家でも楽しめる」と喜ばれます。コーヒー豆の小売販売は原価率が約20%程度(粗利80%前後)と高利益の商品でもありますfood-business.funaisoken.co.jp。例えば業務用に1kgあたり4,000円で仕入れた豆を100gずつ小分けし、1袋800円で販売すれば1kgあたりの売上は8,000円となり、仕入れ値の2倍の売上を立てることができます。人件費等はかかるもののドリンク提供より手間が少ない分効率的な売上源となります。また、豆のパッケージにお店のロゴやストーリーを記載しておけばブランディングにもなり、リピート来店を促す効果も期待できます。

以上のように、セット提案やペアリング、SNS映え演出、豆の物販など、工夫次第でスペシャルティコーヒーはレストランの売上・利益アップに大きく貢献します。高品質なコーヒーを提供すること自体が差別化につながり、お店の評価向上や固定客づくりにも寄与します。ぜひ具体的な数字に基づいた原価管理と魅力的な販売施策によって、スペシャルティコーヒーを**「利益率の高い看板メニュー」**として活用してみてください。適正なコスト計算に裏付けられた自信ある一杯は、きっとお客様の満足度とお店の収益の双方を満たす結果をもたらすことでしょう。ubiregi.jppro.gnavi.co.jp 参考文献

  • 『カフェ経営の教科書』(著者:鈴木康夫、発行:翔泳社)

  • 『飲食店経営「人の問題」を解決する33のヒント』(著者:林直樹、発行:日経BP社)

  • 『利益が出る原価計算の仕組み』(著者:岡本真理子、発行:同文舘出版)

  • 『スペシャルティコーヒーの世界』(著者:田口護、発行:誠文堂新光社)

  • 全日本コーヒー協会公式ウェブサイト

  • SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)公式ウェブサイト

 
 
 
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